【感想】天気の子、に感情を殴られたので感想を書き殴る【ネタバレあり】
こんばんはレンチです。
新海誠監督の「天気の子」を見ました。
実は新海監督の作品は君の名は。しか見ておらず完全なるニワカなのだけれど、天気の子にぶん殴られてしまったので感想…というか考察?レビュー?各シーンで感じたことを書こうと思う。
ガッツリネタバレ、かつ時系列に書き連ねるのでこれから見る予定の方は読まない方が吉です。
・冒頭に、晴れ女になるシーンを入れる強さ
どう考えてもクライマックスとか、中盤の盛り上がりみたいな迫力のあるシーン(実際、途中で全く同じ回想が入った)なのに、それを贅沢に冒頭でガツーンとやっちゃう強さ。
ツカミ、最高。
・冒頭にガツンと入れた割に陽菜がなかなか出てこない
見ててちょっと不安になるくらい出てこない序盤。
・帆高の家出にあまり強い理由が無いのが凄い
それであんなに危険に身を晒すのに…。16歳の危うさか〜高校生にしては子供ぽい気もするけど、キャラデも幼い感じだったしほんと絶妙だと思った。幼すぎず、全然大人でもない。だからこそ成り立つ物語。
島暮らし、家族も息苦しくて…という心境は誰もが想像できるから成り立ってるというのもあるかもしれない。
・銃は、作品内で唯一大人を脅かすことの出来る力である
銃を登場させる意味無くない?という感想をちらほら見た。でも私はこの作品には銃が絶対的に必要だと考えている。
大人達が主人公達を徹底的に子供扱いしてくる世界で、唯一大人を脅かせる力。危うい力。
銃を手に出来たからこそ帆高はあのラストまでいけたんですよね…。
後半、同じく銃を持った大人に完全に敗北しかける帆高を救うのは、銃は持っていないが大人の圭介だ。
「さすがに銃はだめだろ(笑)」的な感想言ってる人もいました。確かに(笑)
最初にSF見せつけられてるから、感覚がいい感じに麻痺してて見れる?かな?と感じた。
・夏美(本田翼)と圭介(小栗旬)のキャラについて
小栗旬たまんねぇ、ほんと演技良かった凄かった。本田翼も、最初は若干違和感あったけど自然な感じが馴染んできて良かった。
夏美は、大人でもなく子供でもないキャラクター。
圭介は、完全なる大人のキャラクター。
夏美はその性質から、帆高達の真実を知ることはないけれど自分の危険を顧みずに帆高達を助けます。そして陽菜に、夏美が知っている真実を教える。
圭介は完全な大人として帆高に関わってきます。大人として帆高を保護するけど、自分の人生を守るために切り捨てようとしたり、陽菜の真実を絶対受け入れない。でも最後、帆高を助ける。
帆高達の純粋で乱暴な価値観に揺さぶられてしまう大人です。一番つらい。
・銃ぶっ放し〜晴れ商売あたりの違和感(でも面白い)
毎日マックで夕飯食べてて明らかに同い年くらいの学生で、急に自分の手を引いて走ったと思ったら実弾ぶっ放しって、さすがにドン引きしそうだ…。とか。
有料で頼んで来たのが15歳前後の少年少女とショタって、その時点でめちゃくちゃダメだろ…。とか。
しかも花火大会とかの規模の会社員まで頼ってるし…大丈夫なのか…。とか。
でも、思い返せば見てる時は気にならなかった…なぜなんだ…。
・天気の巫女について
陽菜は晴れ商売し始めてから既に自分の異変に気づいてたはず。花火大会で「自分の仕事好き、ありがとう」って言ってる時点では確実に気づいてたと思う。そして自分の身が危ないことを感じていた。
新海監督は巫女が好きなんですかね…。
というか新海監督の考える女性像が、神秘的で守るべきもので儚くて美しくて近寄りがたい存在なのかなあと思う。
あと、度々出てくる「いま胸見たでしょ〜」みたいな(君の名は。でいう、口噛み酒売ったら儲かる!とかも)描写は、女性軽視でなくてむしろ真逆で、女性の強かさを描いてるのではないかなと今回見て感じた。
キャラクターたちは、それをマイナスに捉えてないんです。むしろ自分が強くあろうとしている。
・帆高、実家帰らない問題
「帰る場所があるんだから帰れば良い」
そのとおりだ〜!!
これで決定的に実家に問題があったら分かるんだけど…このあたりはちょっと帆高にイラッとしてしまった。銃所持で警察に追われてるので、危険が増えるだけだし。
でももう陽菜のこと大好きだから、家無しになる陽菜のこと置いてなんて…ってのは分かる。分かるが。だからこそ帆高の家出の理由をふわっとしか書いてないのにあのストーリーに出来る(見れる)構成が凄い。
・圭介(小栗旬)、帆高を見放す
退職金って言ってちゃんとけじめつけて別れようとするあたりが完璧に切り捨てられない曖昧さみたいなのが見えて良い…。
夏美(本田翼)に怒られるとこも、自分の選択に罪悪感感じて酒と煙草に溺れちゃってるのとか。ダメな大人。…なのに憎めない。こういう弱さって誰にでもあるよね…。
・落雷について
帆高助けるためとは言え、落雷呼ぶのはやばすぎわろた…。お願い!って言って確信犯だったし。ひ、人が死ぬぞ…。
その後ラブホで笑い合うのとか、もう少しビビれよぉ!ってなった。でもあの感じが、恐怖に向き合わないための自己防衛的な感情の流れだと思うと、年齢も相まって凄く自然な感じ。必死に、現実から逃げようとしてる少年少女。
天気の巫女の超常パワーの描写としては完璧だった…大人を全否定してくる。陽菜と帆高はお互いを守ること以外を全否定してくる。
・ラブホシーンについて
大ピンチの後の束の間の時間…。あの夜食を回し食べする感じがすごい自然で超良かった。
「この雨が止めばいいと思う?」の問いかけ…うう…。
陽菜の透き通る身体と、「どこ見てんのよ」って言う強がりの切なさ。ううう……。
帆高のセリフあんま覚えてないけど、指輪はめてあげて抱きしめ合うあたり、どピンチの中で際立ってとても美しかった。
・陽菜、消えて真夏日
陽菜と引き換えの快晴…。
人々は皆喜んでいる中で、帆高と凪だけが真実を知っている…大人はいくら帆高が説明しても信じようとしない。
陽菜が指輪落として、拾おうとして拾えなくて…ってところ、アニメーションも含めて演技がとても良くて…すごい胸がギュッとなった。
・夏美、帆高を助ける
最初に書いたけど、夏美は、完璧に大人でもないけど子供でもない中間のキャラ。
大人になろうとして就活したりするけど上手くいかない。大人しっかりしろ!って圭介を叱ったりするけど、子供の真実を知ることもない。
でも、だからこそあのピンチで迷いもなくいきなり帆高を助けることが出来る。
・圭介の涙について
この涙に関してびしっとくる言葉が思いつかない。何故泣いた?…でもなんか分かる。
帆高への罪悪感と、自分の娘…愛する者への思い(帆高の陽菜への思い)。
帆高は陽菜を守るために全てを捨てた、圭介は娘を守るために帆高を捨てた。という対比かもしれない。
でも圭介は帆高を捨てきれず、このあと帆高を助けに行きますよね。
・走る帆高
主人公が長尺で必死で走る映画は良い映画。
・ラスト、廃ビルで
圭介は大人なので、帆高の知っている真実(陽菜と引き換えに晴れた)を受け入れられない。
純粋に、警察に追われてしまっている(圭介視点で)狂った帆高を助けるために、自分の人生を危険に晒して迎えに来た。あるいは、自分の罪悪感を晴らすために。
…でも帆高は陽菜を助けるために「行かせてください!」と言うことを聞かない。そんな帆高を強制的に連れ戻そうとする圭介…大人だから。
・圭介に銃を向ける帆高
子供は大人に勝てない。真実も知ってもらえない。
銃だけがこの作品の中で唯一大人に対抗できる力。それを圭佑に向ける。
帆高にとっても脅威だから手は震えている。圭介のことを殺したい訳じゃない、でも帆高は陽菜を助けに行かないといけない。
あと、ここの銃口向ける帆高の顔アップの絵がめっっっちゃくちゃ良かった。すげえ良かった…。
・銃を所持した警察が来る
今まで帆高は、銃を持たない大人に対して銃を向けることで対抗してきた。しかしここで、銃を持った大人に囲まれてしまう。
「打たせるなよ…?」って言われて、もう帆高は銃だけでは大人に対抗出来ない状況になってしまう。
手錠をかけられて絶体絶命、それでも諦めない帆高。…思わず帆高を助けてしまう圭介。
ついに銃を持った大人に対抗する術が無いと思ってたところで、大人である圭介が帆高を助ける。
大人は誰も帆高たちのことを助けてくれなかった世界で、大人が子供を助ける瞬間。
圭介と積み上げた関係と、帆高の陽菜への思いの強さが道を開く。
凪の「姉ちゃんを返せよ!」という言葉も帆高を後押しする。
凪は、帆高たちよりもっともっと窮屈な幼い子供。働けないし、恋愛だってどんなに大人ぶってもままごとみたいに見える。
「姉ちゃんとならどこでもいいよ」と姉についていくだけの凪。「姉ちゃんに青春させたいんだ」と帆高を頼る凪。
でもそれでも、ラストでは知恵を絞って自らの力(と元カノ)保護施設を抜け出す。
・廃ビル屋上へ
(ここで鳥居に走ってってワープしなかったらどうしよう…ってこういう展開を見る度に思う。そのまま鳥居の向こうにストンと着地したらどうしよう…って。。)
・雲の上、目覚める陽菜
帆高にくっついたままの手錠が、なんか良い。ファンタジーに足を踏み入れる現実って感じで。
主人公とヒロインで空を飛ぶ映画は良い映画。
・「陽菜が居るなら雨でもいい。晴れなくていい」
言っちゃったーーー!!!!セカイ系なのに、人類救わないでヒロインを取っちゃったーーー!!しかも第三の道(ヒロインも世界も助ける道)じゃなくて、元に戻る道を選んじゃったーー!!あー!!!やられた!!
「自分のために祈って」ってセリフで、(あ、陽菜が他人ではなく、自分の為に祈ることで日本は晴れてめでたしめでたしか…)って思ったのに全然そんな事なかった。。
・雨に沈む日本
「世界は元々狂ってた」「元に戻っただけ」
大人たちのセリフ。これは帆高と陽菜の救いになる言葉ですね。
映画館で見ているとき、このセリフを聞いてすごく救われて泣いてしまいました。そうだ、この世は狂ってるんだ、分かってる人いたんだ。帆高が狂ってるんじゃない。世界が全て狂ってるんだ。って。
「元々狂ってたから、お前が壊したんじゃないよ。大丈夫大丈夫。」帆高も一瞬この言葉を受け入れようとする。…のに。
・「違う!僕がこの世界を選択した!陽菜といることを選んで世界を壊した!」
まじかーーーー!!!否定しちゃったーーー!!まじかーー!!!!やられたーーーー!!!!バカヤローーー!!!!
でもこれこそがこの映画の、物語の結論、強さなんですよね。
帆高と陽菜にとってそれらの言葉は救いだけど、救われない。
生きることは戦いで、自分の選択を安易に慰めたりしない。選択によって起きる結果を受け入れて、でもそれでも「僕たちは大丈夫だ」。
やられました…。こんな強い映画があってたまるか…。
圭介は自分の選択を受け入れきれなかった大人なのかもしれない。帆高を捨てて娘との人生を取ろうとしたのに、自分の選択を受け入れきれなかった。
人生には往々にしてそういう場面がたくさんやってくる。でもこの世は理不尽で辛くて。
そして大人は逃げるんだ、「この世界は元々狂ってる」って…。